「WISC-V(ウィスク‐ファイブ)知能検査」と聞くと、「難しそう」「うちの子が受けて大丈夫?」と不安になる保護者の方も多いでしょう。
この記事では、WISC-Vの概要、よく使われる専門用語とその意味、検査後に活かせる「具体的な支援例」まで、わかりやすくご紹介します。
倫理規定の遵守
この記事はWISC-Vの倫理規定(秘密保持、適切な実施)を遵守し、正しい知識と安心をお届けできるよう作成しています。
🔍 WISC-V知能検査とは?
お子さんの「考える力」「記憶力」「言葉で伝える力」「作業の速さ」など多様な特徴を知るための検査です。
💡重要!
この検査は「頭の良し悪し」を決めるためのものではありません。どんな場面で力を発揮しやすいか・かなりありそうなことを立体的に知り、「その子らしい学び方・サポート方法」を考える道しるべです。
対象年齢 | 5歳0ヶ月〜16歳11ヶ月 |
実施方法 | 検査者とお子さんが一対一で実施 |
検査時間 | 45〜80分前後(お子さんの様子で変動) |
実施場所 | 安心できる静かな環境 |
📋検査の流れ
ステップ1️⃣ 事前説明と同意の確認
医師や心理士が検査の目的や内容を説明し、保護者が納得してから実施します
ステップ2️⃣ 検査実施
1対1の安心できる環境で、心理士がお子さんのペースや気持ちに寄り添って検査課題を進めます
ステップ3️⃣ 結果説明
検査の1〜2ヶ月後くらいに結果説明の面談があります
結果説明で聞くこと
- 数値だけでなく「なぜその特徴があるのか?」
- 「日常でどんな場面で生かせるか?」
- 具体的な支援方法のご提案
📖検査でよく出る用語の解説
全検査IQ(FSIQ)
お子さんの全体的な知的発達の目安になる数値です。
「頭の良し悪し」や「テストの順位」を示すものではありません。
5つの主要指標
指標 | どんな力? |
---|---|
言語理解(VCI) | 言葉の意味・知識・説明する力 |
視空間(VSI) | 形や空間をイメージする考える力 |
流動性余裕(FRI) | 新しい問題に道筋を立てて対応する力 |
ワーキングメモリ(WMI) | 見たり聞いたりしたことを一時的に覚えながら考える力 |
処理速度(PSI) | 見たり書いたりする速さ・正確さ |
お子様の「強み」と「課題」について
強み・得意分野
5つの指標のうち数値の高い部分。自信と成功体験に生かします
課題・苦手分野
5つの指標のうち数値の低い部分です。工夫や配慮で補う部分です
💝大切なポイント
「強み」を伸ばし、「課題」は適切な支援で補うことで、お子さんの可能性を最大限に引き出すことができます。
🏠指標ごとの支援の例
それぞれの指標が苦手・課題だった場合の具体的な支援例をご紹介します。
指標 | 困りやすい例 | 家庭でできる配慮 | 学校での合理的配慮 | 自己肯定感を高めるサポート・声かけ |
---|---|---|---|---|
言語理解(VCI) | ・指示や説明が分かりづらい ・言葉での表現が苦手 | ・指示や説明は短く区切る ・「○○っていうことだね」と気持ちを言葉にしてあげる | ・説明を具体的で簡単にする ・教材にイラスト等を活用 | 「説明が分かりやすいね!」「伝える力が伸びてるよ」 |
視空間(VSI) | 図や地図、位置関係の把握が苦手 | ・まずは一緒にやってみる ・ブロックやパズル遊びの機会を増やす | ・図やイラストなど視覚情報を提示するときにはシンプルに | 「図で考えるのが得意だね!」「工夫が素晴らしい!」 |
流動性推理(FRI) | 応用・推理問題や初めての課題が苦手 | ・問題の解き方の見本を示す ・やり方や順序を一緒に確認する | ・新しい課題は事前説明を丁寧に ・これまでの学習と関連付けて説明する | 「新しいことにチャレンジできたね」「コツを見つけたね」 |
ワーキングメモリー(WMI) | ・長い話や手順をすぐ忘れる ・注意が途切れる | ・指示は1つずつ ・リストやメモを使う | ・課題ごとに情報提示を分ける ・板書をプリントで渡す | 「着実に覚えられるようになってるよ」「工夫してできたね」 |
処理速度(PSI) | ・作業が人より遅い ・ノートをとるのが遅い | ・作業量を減らす ・小休憩を挟む | ・作業の時間を十分にとる ・口頭解答OKに | 「自分のペースで大丈夫」「あきらめずにやってえらいね」 |
これらはあくまで例です。 実際は全体的な指標の傾向や検査場面でのお子さんの様子などから、お子さんの発達や特性に合った支援を個別に提案します。

❓ よくある質問Q&A
Q. この検査で発達障害の診断がつきますか?
A. WISC-V は「診断そのもの」が目的ではなく、「お子さんらしさ」や「どんなサポートが合うか」を知るためのツールです。
Q. 数値だけ見て心配しなくていい?
A.数値は「今の傾向」です。「苦手」が分かれば早いうちからお子さんに合わせた支援ができます。
Q. 検査を受けると子どもに負担はありませんか?
A.お子さんが安心してチャレンジできるよう、心理士がペースや気持ちに細かく配慮して進めます。途中で疲れた場合は休憩もはさめますし、必ず無理のない範囲で実施します。
Q. 親も検査に同席できますか?
A.主としてお子さんと検査者の1対1ですが、不安が強い場合は隣の部屋で待機したり、検査開始前に付き添いのご相談もできます。まずはご希望を遠慮なくお伝えください。
Q. 一度検査を受けたら、もう受けなおしはできませんか?
A.状況や時期によって再受検も可能です。成長すると変わる部分も多いので、必要に応じて検討できます。ただし短期間での繰り返しは正確な評価になりにくい場合もありますので、主治医にご相談ください(WISC5は前回検査から最低2年の期間を空けることが推奨されています)。

💝保護者のみなさまへ
「数値」や「できないこと」ばかりにとらわれず、日々の生活の中で「どんな関わりや工夫がこの子には合いそうか」を一緒に探していくことが大切です。
わからない用語や疑問は、何度でも質問して大丈夫。 検査担当者や支援スタッフに遠慮なく相談してください。
WISC-Vは“評価”や“ラベル付け”のための検査ではありません。
お子さんの強みやすてきな部分を知り、「その子らしい成長と毎日」を作る“サポートの設計図”です。
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