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「感じすぎる」と「感じにくい」に寄り添う ~感覚特性支援ガイド~ 第3回:触覚・嗅覚の過敏さとその対処法

目次

はじめに

第3回は、日常生活で特にストレスを感じることの多い触覚過敏と嗅覚過敏について詳しく解説いたします。

「服のタグがチクチクして着替えを嫌がる」「給食の匂いで気持ち悪くなってしまう」「散髪や歯磨きを極度に嫌がる」といったお子さんの行動に悩まされた経験は、多くの保護者の方がお持ちでないでしょうか。

これらの反応も、前回話した聴覚・視覚過敏と同様に、お子様にとって実際に不快で我慢しがたいこととして感覚体験されています。


✋ 触覚過敏:触覚への過敏性と対処法

見られやすい症状

触覚過敏のあるお子様には、以下のような反応が見られることがあります

  • 衣類への強い反応
    • 服のタグや縫い目がチクチクして痛い
    • 特定の素材の服しか着られない
    • 新しい服や洗濯したての服を嫌がる
  • 身体接触への過敏さ
    • 人に触れられることを極度に嫌がる
    • 軽いタッチでも痛みとして感じる
    • 予期しない接触でパニックになる
  • 日常ケアへの抵抗
    • 散髪、爪切り、歯磨きを嫌がる
    • お風呂やシャワーの水流が痛い
    • マスクの着用が難しい
  • 特定の活動を拒否
    • 粘土や絵の具などの触感が苦手
    • 砂遊びや泥遊びができない
    • 手が汚れることを極度に嫌う

具体的な対処法

1️⃣ 衣類への配慮

服選びのポイント

  • タグレス商品の選択
  • 服のタグを丁寧に切り取る(はさみよりもリッパーで外すのがおすすめ)
  • シームレス衣類の使用
  • ふんわり柔らかの素材を選ぶ
  • 洗剤や柔軟剤も刺激の少ないものに変更

おすすめグッズ

グッズ特徴
ユニクロのエアリズムシリーズタグレス・縫い目なしのものが選びやすい
オーガニックコットン100%の下着生地と肌の摩擦が少なく肌に優しい
竹繊維モダール素材の衣類滑らかで柔らかな肌触り

2️⃣ 身体接触への配慮

コミュニケーションの工夫:

  • 接触前に必ず声をかけて許可を得る
    • ✅「今から髪の毛に触るね」と具体的に伝える
    • ✅「抱っこしてもいい?」と確認する
  • 苦手な場合は非接触コミュニケーションを重視
    • 言葉やアイコンタクト、ジェスチャーを活用
  • 本人が快適と感じる接触方法を一緒に探す
    • 軽いタッチより少し圧迫した方が心地よい場合もある

3️⃣ 日常ケアの工夫

散髪・爪切り・歯磨き対策:

ケア項目具体的な工夫
散髪・事前に美容師さんに特性を説明
・できるだけ同じ道具を使ってもらうようにする
・短時間で終わってもらえるようお願いする
爪切り・子ども用の小さなハサミタイプを使う
・お風呂上がりの柔らかい時を狙う
・少しずつ数日に分けて切る
歯磨き・毛の柔らかい歯ブラシを選ぶ
・電動歯ブラシの方が楽な場合もある
・歯磨き粉の味や量を調整
入浴・シャワーの水圧を弱く調整
・温度を段階的に慣らす
・好きな感触のタオルやスポンジを使用

👃 嗅覚過敏:においへの過敏性と対処法

見られやすい症状

嗅覚過敏のあるお子さんには、以下のような反応が見られます

  • 化学物質系の匂いへの強い反応
    • 柔軟剤や頭痛、洗剤の匂いでや吐き気が起こる
    • 消臭剤や芳香剤が苦手
    • 新車や新築の匂いで体調不良になる
  • 食べ物の匂いへの敏感さ
    • 同じ食卓にのっている食べ物の匂いを嫌がる
    • 給食時間に教室にいられない
    • 冷蔵庫の匂いで気分が悪くなる
  • 環境臭への反応
    • 教室内の匂い(他の子の服の香りなど)で集中できない
    • トイレや体育館の匂いが苦手
    • 人混みなど、様々な匂いが混ざった環境で疲れやすい

具体的な対処法

1️⃣ 家庭環境の調整

日常生活での工夫:

  • 香料の少ない洗剤や柔軟剤を選択
  • 空気清浄機を使って室内の空気を清潔に保つ
  • 無香料・低刺激の製品への切り替え
  • 料理の匂いが苦手な場合は換気扇を強めに回す
  • アロマや芳香剤は控えめに、または使用しない

2️⃣おすすめ対策グッズ

グッズ特徴使用シーン
活性炭入りマスク一般的なマスクより防臭効果が高い外出時間・給食時間
N95やマスクフィルター付きマスクより強力な匂いカット効果特に匂いの強い場所
ポケットアロマディフューザー持ち運び可能な小型タイプ学校・外出先
アロマストーン好きな香りを染み込ませて持参緊急時のリフレッシュ
香りつきハンカチ気分転換用日常的な持ち歩き用

3️⃣好きな香りの活用

ポジティブな嗅覚体験を作る

  • お子さんが快適と感じる香りを見つける
    • ラベンダー、ペパーミント、柑橘系など
  • マスクに少量つけて不快な匂いをブロック
  • ハンカチやティッシュに染み込ませて携帯。
  • アロマペンダントなど身に着けられる香りグッズ

家庭でできる総合的な環境づくり

感覚に配慮した住空間の工夫

リビング・子ども部屋

  • 心地よい素材のソファカバーやクッションを配置
  • 無香料の掃除用品を選択
  • 空気清浄機で匂いを管理
  • お気に入りのブランケットを常備

洗面所・お風呂

  • 刺激の少ないシャンプーやボディソープ
  • 柔らかいタオルや入浴グッズ
  • 無香料の歯磨き粉や歯ブラシ
  • 温度や流量を調整しやすいシャワーヘッド

外出時の準備

お出かけ前のチェックリスト

  • ✅ 予備の着替え(着心地のよいもの)
  • ✅ 防臭マスクやハンカチ
  • ✅お気に入りのアロマグッズ
  • ✅手を拭くためのウェットティッシュ(無香料)

学校・園との連携のポイント

具体的な相談内容

触覚過敏について伝えること

  • 苦手な服の素材
  • 発表会や水泳授業での配慮
  • 図工や科学の実験での材料に関する相談
  • 身体測定や健康診断時の配慮

嗅覚過敏について伝えること:

  • 給食時間の座席や換気の配慮
  • 掃除時間の清掃場所への配慮
  • 他の子どもの香料系製品に対する配慮
  • 体調不良時早退の可能性

学校での配慮の例

場面具体的な配慮
給食時間匂いの苦手な子は個室で食べる、マスク着用許可
図工・科学代替材料の使用、手袋着用の許可
体育・水泳個別の運動着の配慮、シャワーに変えてホースで水浴び
掃除時間洗剤を使わない係への変更
行事事前の説明と休憩場所の確保

段階的なアプローチを大切に

感覚過敏への対応は、一度に大きな変化を求めるのではなく、あくまで「本人が安心できる小さなチャレンジ」を積み重ねることがポイントです。

触覚過敏に対する段階的なアプローチ

  • 観察期:どんな感覚や刺激が苦手か、日々の様子を丁寧に観察し、具体的に把握します。
  • 環境調整期:苦手な刺激を極力避けられる環境を整え、安全・安心できる場所を用意します。
  • 慣らし期:自分のペースに合わせて、ほんの小さな刺激から少しずつ新しい感覚や体験にチャレンジします。
  • 適応期:慣れてきたら、似たような刺激や初めての体験にも幅を広げていきます。

嗅覚過敏に対する段階的なアプローチ

  • 回避期:強い不快感のある匂いからは、まずしっかり距離をとり、無理に刺激を与えないようにします。
  • 環境調整期:マスクの活用や好きな香りを近くで使うなど、お子さんに合った対処法で対応します。
  • 慣らし期:体調が良いタイミングで、短時間だけ苦手な匂いを嗅いでみるなど、少しずつ段階を踏んで慣​​らしていきます。
  • 適応期:日常のさまざまなシーンで自分なりの対処法を活用し、徐々に対応できる範囲を広げていきます。

成功のポイント

  • 無理強いはNG:お子さんのペースを最優先にし、嫌がることは絶対に無理強いしません。
  • 小さな成功もたくさん褒める:「今日はマスクを着けて参加できたね!」など、できたことを具体的に認めてあげましょう。
  • 記録をつける:体調や環境によって反応は日々変わります。できたことや困ったことを記録し、変化や傾向を把握しましょう。
  • 家族で情報共有:家族みんなが同じ対応を心がけることで、安心感と一貫性が生まれます。

保護者のみなさんへ

長期的な視点で見守ることの大切さ

触覚や嗅覚の過敏さは、すぐに改善されるものではありません。また、体調や気分、成長のステージによって反応が日々変化することもあります。

  • 体調や疲労によって反応も変わります。
  • 成長とともに少しずつできるようになることも多いです。
  • 快適な環境を整えることで、ストレスは大幅に軽減できます。
  • できたことを積み重ね、自分なりの対処法を身につけていけるよう家族みんなで応援しましょう。

家族全体のケアも大切に

  • 家族みんなが快適に過ごす工夫を心がけましょう。
  • きょうだいにも分かりやすく説明し、ご理解とご協力を頂くことが大切です。
  • 保護者自身も周囲に相談し、ストレスを抱えすぎないようにしましょう。
  • 同じ悩みを持つご家庭とも情報交換をしたり、共感し合うことも心の支えになります。

次回予告


第4回は「知覚・温痛覚の過敏さとその対処法」を特集します。

  • 食べられる食品が限られていて、栄養バランスが気になる
  • お風呂の温度調節が苦手で入浴を嫌がる
  • 注射や医療処置で、強い痛みや不安を感じやすい

…といった、食事や健康管理に関する問題ごとに焦点をあて、具体的な対処法や工夫をご紹介します。

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