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ペアレントプログラムとペアレントトレーニングの違いは? 保護者が選ぶべき支援プログラム解説

著者:森山 暖(もりやま はる)  

公認心理師 | 総支援歴 23年(発達障がい支援中心)

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目次

はじめに

子どもが発達障がいと診断されると、保護者の不安は深まります。「何から手をつければいいのか」「このままで大丈夫だろうか」と悩み、一人で抱え込みがちです。しかし、子育ては“孤独な戦い”ではありません**。専門家が考案したサポートプログラムに参加すると、

  • 子どもの行動を客観的に理解する視点
  • 日々の接し方を改善する具体的なヒント
  • 同じ悩みを持つ保護者との安心できる交流の場

を得ることができます。

本記事では、発達障がいと診断されたお子さんをもつ保護者向けに、代表的な親支援プログラム――ペアレントプログラム(以下「ペアプロ」)とペアレントトレーニング(以下「ペアトレ」)――の基本的な特徴と違い、そして選び方をわかりやすく解説します。

親支援プログラムとは?

発達障がいのある子どもには、予期しないパニックや言葉で伝えにくい不満、感覚過敏による混乱など、周囲が戸惑う行動が見られます。保護者は「どう叱ればよい?」「どんなほめ方が効果的?」と手探り状態に陥りやすく、孤立感や自己否定を感じることも少なくありません。

親支援プログラムは、こうした不安や疑問を解消し、安心して子育てできるように設計された科学的根拠に基づく手法です。日本では2000年代以降、日本各地の自治体や支援団体が「普及型プログラム(ペアプロ)」「専門型プログラム(ペアトレ)」を開催しています。

ペアレントプログラム(ペアプロ)の基本

定義と目的

  • 対象:診断の有無を問わず「子どもの行動で気になることがある」保護者
  • 目的:「行動を事実ベースで捉える力」と「ほめる視点」を身につけ、子育てへの自信と仲間づくりを促進

実施形式

  • 回数・期間:全6回/3ヶ月
  • ペース:2~3週間に1度
  • 参加人数:6~10名/ペアワーク
  • 実施者:保育士・保健師・支援センター職員 など

主な内容

  1. 現状把握「できること」と「困ること」を整理
  2. 行動観察の練習:より具体的に子供の行動を捉える
  3. 行動パターン分類:場面別の共通点を探す
  4. ほめ方演習:できた行動を増やす、肯定的対応を練習する
  5. 振り返りと継続計画:成果確認と今後の実践方法

ペアレントトレーニング(ペアトレ)の基本

定義と目的

  • 対象:発達障がいと診断を受けたお子さんの保護者
  • 目的:応用行動分析学(ABA)を土台に、問題行動の減少適応行動の増加を目指す

実施形式

  • 回数・期間:全6~10回/3~4.5ヶ月
  • ペース:2週間に1度
  • 1回あたり:90~120分
  • 参加人数:6~8名/小グループ
  • 実施者:心理士・発達障がい専門相談員 など

主な内容(6つのコア要素)

  1. 子どもの良いところを見つけてほめる
    ポジティブな行動に注目し、具体的にほめることで行動を強化
  2. 子どもの行動を3つのタイプに分ける
    「好ましい行動」「好ましくない行動」「許しがたい行動」の3つに分類。
  3. 行動理解(ABC分析)
    子どもの行動を、行動の前のきっかけ (A: Antecedent)、行動そのもの (B: Behavior)、行動の後の結果 (C: Consequence) の3つの要素で客観的に分析し、なぜその問題行動が起きているのかを理解します。
  4. 環境調整
    好ましい行動が起きやすくなるように、環境を整える
  5. 子どもが達成しやすい指示
    具体的でわかりやすい指示を、穏やかに伝える方法を学ぶ
  6. 困った行動(不適応行動)への対応
  7. 困った行動に注目しすぎず、好ましい行動を待つ「効果的無視」などの方法を学びます。

ペアプロ vs. ペアトレ 比較一覧

項目ペアレントプログラムペアレントトレーニング
専門性簡易的・普及型専門性が高い
対象範囲お子さんを持つ保護者誰でも診断を受けた保護者
実施者地域支援者(保育士・保健師など)心理士・専門相談員
目的行動観察+ほめ方の視点を学ぶABA理論+具体的技法を習得
形式全6回・グループワーク全6~10回・講義+演習
手法体験共有・ペアワークロールプレイ・ホームワーク

よくある質問

Q1:診断前でも参加できますか?
A:ペアプロは診断不問。気になる行動があれば誰でも参加可能です。ペアトレは診断済みが基本ですが、医師の指示があれば相談可。

Q2:仕事や家事で時間が取れません…
A:多くの自治体で夜間・土曜開催あり。希望時間帯を伝えて調整を。

Q3:費用はいくら?
A:無料~1,000円程度が一般的。教材費として別途500~1,000円かかる場合も。

お住まいの地域で探すには

  1. インターネット検索:「○○市 ペアレントプログラム」「○○県 ペアトレ」
  2. 電話で問い合わせ:
    • 市役所・町村役場の障害福祉課
    • 発達障がい者支援センター
    • 保健所・保健センター

まとめ

ペアレントプログラムとペアレントトレーニングは、いずれも発達障がい児をもつ保護者の“大きな支え”となるプログラムです。

  • ペアプロ:親の心構え・基本スキルを習得する入門編
  • ペアトレ:具体的行動変容技術を学ぶ実践編

どちらも「完璧な親」を目指すものではなく、子育ての悩みを共有し、お子さんとの関係をより良くする“最初の一歩”です。まずは気軽に説明会や体験会に参加し、ご自身とお子さんに最適なプログラムを見つけてください。

【更新履歴】

2025年10月13日:文章の構成を見直し、内容をより分かりやすく修正。記事タイトルとアイキャッチ画像を変更。

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この記事を書いた人

専門資格:公認心理師、精神保健福祉士、社会福祉士(いずれも国家資格)
総支援歴:23年(発達障がい児者支援が中心)
専門領域:ASD, ADHD, SLDの臨床心理査定、二次障害の予防、家族支援
実績:総合病院の内の発達障害支援部門や児童専門相談機関等で延べ2,000件超の支援実績。養育里親歴12年。里子・実子の養育経験。

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