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ペアレントプログラム徹底ガイド 【入門編】 子育ての視点が変わる ペアレントプログラムの効果

著者:森山 暖(もりやま はる)  

公認心理師 | 総支援歴 23年(発達障がい支援中心)

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目次

はじめに

子どもが発達特性を持つ場合、保護者の方は「どう接したらよいのか分からない」「私の育て方は間違っているのかも」と、強い孤立感や自己否定に陥ることがあります。

そんな保護者の方に知ってほしいのが、ペアレントプログラム(通称:ペアプロ)です。これは単なる育児講座ではなく、同じ悩みを持つ仲間と一緒に、「子どもの良いところを見つける力」を育てていく実践的なプログラムです。


ペアレントプログラムって何?

基本的な特徴

ペアレントプログラムは、NPO法人アスペ・エルデの会によって開発された、地域普及を目指した保護者支援プログラムです1

なぜ「ペアプロ」が注目されるのか

  1. 問題探しではなく「良いところ探し」
    子どもの困った行動ばかりに目が向きがちですが、ペアプロでは「できていること」「頑張っていること」に焦点を当てます。
  2. 仲間がいる安心感
    一人で悩むのではなく、同じような経験をする保護者同士が支え合える場にもなります。
  3. 実践的なワーク中心
    理論を学ぶだけでなく、実際にワークシートを書いたり、話し合いながら学べる構成になっています。

なぜペアプロが生まれたのか?

現代の子育ての課題

近年、発達障がいの認知度が高まり、支援を求める家庭が増加しています。しかし、従来からあるペアレントトレーニングは

  • 専門性が高く、敷居が高い
  • 長期間の出席が必須で参加が困難
  • 地域によって受けられる機会が限られる

といった課題がありました。

「誰でも、どこでも」の理念

そこで開発されたのが、専門的なペアレントトレーニングの前段階として、家庭や地域で役立つ基本的な関わり方を広めることを主目的に開発されました。

開発の3つの目標

  • 誰でも参加しやすい内容
  • どこでも実施できるシンプルな構成
  • 地域で継続的に開催できるシステム

ペアプロの基本方針

1. ペアワークを中心とした学び

なぜペアワークなのか?

  • 大勢の前で発表するより、1対1の方が話しやすい
  • お互いの工夫や発見を教え合える
  • 自分のアドバイスが相手に喜ばれることで自信につながる

2. 「できた」「頑張っている」に注目

従来の子育て支援では「問題行動をどう直すか」に焦点が当たりがちでした。しかし、ペアプロでは

❌ 問題点探し
「なぜできないの?」「どこが悪いの?」

⭕ 良いところ発見
「ここはできているね」「こんなに頑張ってる」

3. 段階的な学習プロセス

全6回のプログラムを通じて、子どもの気持ちや意図ではなく、「行動」という客観的な事実に基づいて子どもを理解し、関わる「行動で考える視点」を身につけていきます。


科学的根拠に基づく効果

ペアレントプログラムの効果については、複数の研究で実証されています2

参加後の主な改善点

保護者への効果

  • 抑うつ症状の軽減: 精神的健康状態が大幅に改善
  • 肯定的働きかけの増加: 子どもを褒める頻度・質が向上
  • 叱責の減少: 感情的な対応が減り、冷静な関わりが可能に

子どもへの影響

  • 自己肯定感の向上: 褒められる経験が増え、自信がつく
  • 親子関係の改善: コミュニケーションがスムーズになる
  • 行動の改善: 問題行動の頻度が自然に減少

参加者の声(実例)

Aさん(5歳男児の母)
「息子の『できないこと』ばかり気になっていましたが、プログラムを通じて『こんなにできることがある』と気づけました。息子も以前より笑顔が増えた気がします」

Bさん(8歳女児の母)
「同じような悩みを持つお母さんたちと話せて、『私だけじゃないんだ』と安心できました。一人で抱え込まずに済むようになりました」


プログラムの全体像

基本構成

  • 期間: 全6回(週1回、約6週間)
  • 時間: 1回90分程度
  • 参加人数: 6〜8名程度
  • 形式: ペアワーク + グループ共有

各回のテーマ(概要)

回数テーマ主な内容
1回目現状把握自分と子どもの行動を整理
2回目行動の書き方より具体的な表現に修正
3回目カテゴリー分け行動を分類してパターンを把握
4回目ギリギリセーフ発見困った行動の裏の頑張りを発見
5回目状況分析環境や条件を考慮した分析
6回目振り返り学習成果の確認と今後の計画

参加できる場所・方法

実施機関

ペアレントプログラムは全国の様々な場所で実施されています

  • 市町村役場(障害福祉課・子育て支援課)
  • 発達障害者支援センター
  • 保健所・保健センター
  • 児童発達支援事業所
  • 地域の子育て支援センター

参加費・条件

  • 参加費: 無料〜1,000円程度(自治体により異なる)
  • 教材費: 500〜1,000円程度の場合もあり
  • 託児: 多くの会場で託児サービスを提供

まとめ:ペアプロで得られるもの

ペアレントプログラムは、発達特性のあるお子さんを持つ保護者にとって「最初の一歩」として最適なプログラムです。

🌟 ペアプロで得られる3つの宝物

  1. 新しい視点
    子どもの「困った行動」の裏にある「頑張り」を見つける目
  2. 仲間との絆
    同じ悩みを共有し、支え合える仲間とのつながり
  3. 子育ての自信
    「私なりに頑張っている」という自己肯定感

次回予告

次回からは、全6回のプログラム内容を詳しく解説します。各回でどんなワークを行うのか、どんな気づきや変化があるのかを、具体的な事例とともにご紹介します。


【出典・参考文献】

1 NPO法人アスペ・エルデの会『楽しい子育てのためのペアレント・プログラムマニュアル』、2014年
2 各種研究報告より(国立障害者リハビリテーションセンター研究所等)

【更新履歴】

2025年10月13日:文章の構成を見直し、内容をより分かりやすく修正。記事タイトルとアイキャッチ画像を変更。

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この記事を書いた人

専門資格:公認心理師、精神保健福祉士、社会福祉士(いずれも国家資格)
総支援歴:23年(発達障がい児者支援が中心)
専門領域:ASD, ADHD, SLDの臨床心理査定、二次障害の予防、家族支援
実績:総合病院の内の発達障害支援部門や児童専門相談機関等で延べ2,000件超の支援実績。養育里親歴12年。里子・実子の養育経験。

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