はじめに
子育てをしていると、誰しも一度は「この子にどう接したらよいのか分からない」「私の育て方は間違っているのかも」と悩むことがあります。
そんな保護者の方に知ってほしいのが、ペアレントプログラム(通称:ペアプロ)です。これは単なる育児講座ではなく、同じ悩みを持つ仲間と一緒に、「子どもの良いところを見つける力」を育てていく実践的なプログラムです。
ペアレントプログラムって何?
基本的な特徴
ペアレントプログラムは、NPO法人アスペ・エルデの会によって開発された、地域普及を目指した保護者支援プログラムです1。
なぜ「ペアプロ」が注目されるのか
- 問題探しではなく「良いところ探し」
子どもの困った行動ばかりに目が向きがちですが、ペアプロでは「できていること」「頑張っていること」に焦点を当てます。 - 仲間がいる安心感
一人で悩むのではなく、同じような経験をする保護者同士が支え合える場にもなります。 - 実践的なワーク中心
理論を学ぶだけでなく、実際にワークシートを書いたり、話し合いながら学べる構成になっています。

なぜペアプロが生まれたのか?
現代の子育ての課題
近年、発達障がいの認知度が高まり、支援を求める家庭が増加しています。しかし、従来からあるペアレントトレーニングは
- 専門性が高く、敷居が高い
- 長期間の出席が必須で参加が困難
- 地域によって受けられる機会が限られる
といった課題がありました。
「誰でも、どこでも」の理念
そこで開発されたのが、専門的なペアレントトレーニングの前段階として位置づけられるペアレントプログラムです。
開発の3つの目標
- 誰でも参加しやすい内容
- どこでも実施できるシンプルな構成
- 地域で継続的に開催できるシステム
ペアプロの基本方針
1. ペアワークを中心とした学び
なぜペアワークなのか?
- 大勢の前で発表するより、1対1の方が話しやすい
- お互いの工夫や発見を教え合える
- 自分のアドバイスが相手に喜ばれることで自信につながる
2. 「できた」「頑張っている」に注目
従来の子育て支援では「問題行動をどう直すか」に焦点が当たりがちでした。しかし、ペアプロでは
❌ 問題点探し
「なぜできないの?」「どこが悪いの?」
⭕ 良いところ発見
「ここはできているね」「こんなに頑張ってる」
3. 段階的な学習プロセス
全6回のプログラムを通じて、徐々に「行動で考える」視点を身につけていきます。

科学的根拠に基づく効果
ペアレントプログラムの効果については、複数の研究で実証されています2。
参加後の主な改善点
保護者への効果
- 抑うつ症状の軽減: 精神的健康状態が大幅に改善
- 肯定的働きかけの増加: 子どもを褒める頻度・質が向上
- 叱責の減少: 感情的な対応が減り、冷静な関わりが可能に
子どもへの影響
- 自己肯定感の向上: 褒められる経験が増え、自信がつく
- 親子関係の改善: コミュニケーションがスムーズになる
- 行動の改善: 問題行動の頻度が自然に減少
参加者の声(実例)
Aさん(5歳男児の母)
「息子の『できないこと』ばかり気になっていましたが、プログラムを通じて『こんなにできることがある』と気づけました。息子も以前より笑顔が増えた気がします」
Bさん(8歳女児の母)
「同じような悩みを持つお母さんたちと話せて、『私だけじゃないんだ』と安心できました。一人で抱え込まずに済むようになりました」
プログラムの全体像
基本構成
- 期間: 全6回(週1回、約6週間)
- 時間: 1回90分程度
- 参加人数: 6〜8名程度
- 形式: ペアワーク + グループ共有
各回のテーマ(概要)
回数 | テーマ | 主な内容 |
---|---|---|
1回目 | 現状把握 | 自分と子どもの行動を整理 |
2回目 | 行動の書き方 | より具体的な表現に修正 |
3回目 | カテゴリー分け | 行動を分類してパターンを把握 |
4回目 | ギリギリセーフ発見 | 困った行動の裏の頑張りを発見 |
5回目 | 状況分析 | 環境や条件を考慮した分析 |
6回目 | 振り返り | 学習成果の確認と今後の計画 |

参加できる場所・方法
実施機関
ペアレントプログラムは全国の様々な場所で実施されています
- 市町村役場(障害福祉課・子育て支援課)
- 発達障害者支援センター
- 保健所・保健センター
- 児童発達支援事業所
- 地域の子育て支援センター
参加費・条件
- 参加費: 無料〜1,000円程度(自治体により異なる)
- 教材費: 500〜1,000円程度の場合もあり
- 託児: 多くの会場で託児サービスを提供
まとめ:ペアプロで得られるもの
ペアレントプログラムは、発達特性のあるお子さんを持つ保護者にとって「最初の一歩」として最適なプログラムです。
🌟 ペアプロで得られる3つの宝物
- 新しい視点
子どもの「困った行動」の裏にある「頑張り」を見つける目 - 仲間との絆
同じ悩みを共有し、支え合える仲間とのつながり - 子育ての自信
「私なりに頑張っている」という自己肯定感

次回予告
次回の記事では、全6回のプログラム内容を詳しく解説します。各回でどんなワークを行うのか、どんな気づきや変化があるのかを、具体的な事例とともにご紹介します。
1 NPO法人アスペ・エルデの会『楽しい子育てのためのペアレント・プログラムマニュアル』、2014年
2 各種研究報告より(国立障害者リハビリテーションセンター研究所等)
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