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ペアレントプログラム徹底ガイド【第2回】行動で書く!~「できない」から「できている」を見つける技術~

第1回で作成した現状把握表、どんな発見がありましたか?「困ったところ」ばかり思い浮かんだという方、「いいところが意外に思いつかなかった」という方が多いのではないでしょうか。

第2回では、その現状把握表をさらに具体的で観察しやすい「行動」表現にブラッシュアップしていきます。そして最も大切な学び、「いいところ」のハードルを大幅に下げるという発想の転換も体験します。


目次

第2回で体験すること

🎯 第2回の目的

より「具体的で観察しやすい行動表現」を身につけ、「いいところ」の基準を見直すことで、日常の中で子どもと自分の良いところをもっと発見できるようになります。

⏰ 第2回の流れ(約90分)

  1. 前回の宿題振り返り(20分)
  2. 「行動で書く」とは?(15分)
  3. 表現のブラッシュアップワーク(30分)
  4. 「いいところ」の基準を下げる学習(20分)
  5. 次回への宿題説明(5分)

前回の宿題振り返り~「夫をほめた」体験談

第2回は、前回の宿題の振り返りから始まります。特に注目されるのが「夫(身近な大人)をほめてみた」体験談の共有です。

😊 参加者のリアルな体験談

Eさん(7歳男児の母)の体験

『いつも仕事お疲れ様、ありがとう』と言ったら、最初は『え?何かした?』と言われました(笑)。でも嬉しそうで、その日はいつもより機嫌が良く、子どもにも優しく接してくれました」

Fさん(5歳女児の母)の体験

「恥ずかしくて直接は言えず、メモに『昨日の夕食の片付け、ありがとうございました』と書いて置きました。夫から『こういうの嬉しい』と返事がきて、私自身も温かい気持ちになりました」

🎁 「ほめる」ことで起こる変化

ほめられた相手への影響

  • 表情が明るくなる:驚きから喜びへの表情変化
  • 行動の変化:より協力的になる、優しくなる
  • 継続への意欲:「また頑張ろう」という気持ちが生まれる

ほめた本人(保護者)への影響

  • 気持ちの変化:イライラが減り、温かい気持ちになる
  • 関係性の改善:家庭の雰囲気が良くなる
  • 新しい発見:「ほめることで相手も自分も変わる」ことを実感

「行動で書く」とは?~具体性の重要性

📝 なぜ「行動で書く」のか?

第1回で多くの参加者が体験するのは、「明るい」「優しい」「だらしない」といった性格や特徴で書いてしまうことです。しかし、これらの表現では

  • 何を具体的にほめたらいいか分からない
  • 人によって解釈が違う(「明るい」の基準は人それぞれ)
  • 改善点が見えにくい

💡 「行動で書く」メリット

  • 誰でも理解できる:見たまま、聞いたままを記録
  • ほめやすい:「○○してくれてありがとう」が言いやすくなる
  • 改善しやすい:「どこを変えればいいか」が具体的に見える
  • 成長が見える:小さな変化も記録として残る

✨ 表現変換の実践例

❌ 特徴・性格表現⭕ 行動表現
「明るい性格」「朝、友達に元気よく挨拶する」
「だらしない」「脱いだ服を床に置く」
「優しい子」「困っている友達に声をかける」
「集中力がない」「宿題を10分間続ける」
「協調性がない」「グループ活動で自分の意見を言う」

表現のブラッシュアップワーク~実践タイム

🔄 ワークの進め方

参加者はペアになり、お互いの現状把握表を見せ合いながら、より具体的な行動表現に書き換えていきます。

📋 ブラッシュアップの手順

  1. ペアで現状把握表を見せ合う(5分)
  2. 「これってどんな行動?」とお互いに質問し合う(15分)
  3. より具体的な表現に書き換える(10分)

💬 よくある質問と答え方の例

Q: 「責任感が強い」って書いたんですが…

A: 「どんな時に責任感を感じますか?」
→ 「係活動を最後まで一人でやり遂げる」「約束の時間に遅れない」など

Q: 「食事のマナーが悪い」って…

A: 「具体的にはどんなこと?」
→ 「箸を正しく持つ」「『いただきます』を言う」「食べ終わったら食器を片付ける」など

🌟 ブラッシュアップの実例

Gさん(6歳男児の母)のブラッシュアップ例

Before: 「人付き合いが苦手で協調性がない」

After:

  • 「朝、友達に挨拶する」
  • 「グループ活動で自分の役割をする」
  • 「順番を待つ」

「『協調性がない』と思っていたけれど、実はできていることもたくさんあるんですね!」


発想の転換~「いいところ」の基準を下げる

第2回の最も重要な学びがここにあります。多くの保護者が持っている「いいところ」への高いハードルを、思い切って下げることです。

❌ 従来の「いいところ」基準

  • 「完璧にできる」ことだけが「いいところ」
  • 「他の子より優れている」ことが「いいところ」
  • 「特別なこと」でないと「いいところ」じゃない
  • 「毎回必ずできる」ことだけが「いいところ」

⭕ 新しい「いいところ」基準

  • 60〜70%できていれば十分「いいところ」
  • 「当たり前」なことも立派な「いいところ」
  • 「他の子と比べない」、その子なりの成長を見る
  • 「今日だけできた」も「いいところ」

🔄 「努力しているところ」から「いいところ」への格上げワーク

このワークでは、第1回で「努力しているところ」に書いた項目を見直し、実際にできている部分を「いいところ」に移動させます。

Before(努力しているところ)After(いいところ)理由
「子どもと話す時間を作るように心がけている」「子どもと話す時間を作っている」週の半分以上できているなら十分「いいところ」
「野菜を食べさせようと頑張っている」「毎日野菜を食卓に出している」食べる・食べないに関係なく、出すこと自体が素晴らしい
「宿題をやらせようとしている」「宿題の声かけをしている」結果ではなく、親の行動そのものを評価

💡 参加者の気づき例

Hさん(4歳女児の母)の発見

「『早寝早起きをさせようと努力している』と書いていましたが、実際は週4日くらいは9時に寝かせているんです。ペアのお母さんから「それって十分早寝させているよ」と言われました。自分で自分を厳しく評価しすぎていました


「当たり前」をやめて「素晴らしい」に変える

🚫 NGワード:「当たり前」「普通」

第2回では、「当たり前」「普通」を禁止ワードとして扱います。これらの言葉は、せっかくの「いいところ」を見えなくしてしまうからです。

🔄 言葉の置き換え練習

  • 「朝起きるのは当たり前」→ 「毎日ちゃんと朝起きている」
  • 「挨拶するのは普通」→ 「人に会うと挨拶している」
  • 「宿題するのは当然」→ 「毎日宿題に取り組んでいる」
  • 「服を着るのは常識」→ 「一人で着替えができている」

✨ 「当たり前」の奇跡に気づく

ファシリテーターからのメッセージ

「毎朝起きること、ご飯を食べること、学校に行くこと…これらは決して『当たり前』ではありません。お子さんなりに、毎日頑張っていることです。そして、それを支えているお母さん・お父さんも、本当に素晴らしいことをしているのです」


第2回の宿題~さらなる発見への挑戦

📚 3つの宿題

宿題1:現状把握表をパワーアップ

  • 自分について各10個ずつ書いてくる
  • 子どもについて各10個ずつ書いてくる
  • 今日学んだ「行動表現」と「基準を下げる」を実践
  • 新しく気づいた「いいところ」を随時追加

宿題2:子どもをほめる実践(レベルアップ版)

  • 少なくとも3回、子どもの「いいところ」を具体的にほめる
  • 「行動で」ほめる練習(「優しいね」ではなく「○○してくれてありがとう」)
  • 子どもの反応と自分の気持ちの変化を記録

💡 ほめ方のコツ

  • 「朝、一人で起きてくれてありがとう」
  • 「友達に優しく声をかけているの見てたよ」
  • 「宿題に10分間集中できたね、すごい!」

宿題3:夫をほめる継続+観察

  • 今度は「行動で」ほめてみる
  • 相手の反応の変化を観察
  • 家庭全体の雰囲気の変化に注目

💡 行動でほめる例

  • 「お疲れ様」→「今日も遅くまで働いてくれてありがとう」
  • 「いつもありがとう」→「食器を洗ってくれて助かります」

🤔 宿題でつまずきやすいポイントと対策

Q: 10個も「いいところ」が思いつかない時は?

A: まずは「今日一日」を振り返ってみましょう。起床から就寝まで、何気なくやっていることすべてが「いいところ」の候補です。

Q: 子どもが「ほめられるのを嫌がる」時は?

A: 直接的でなくても大丈夫。「○○ができているなぁ」と独り言のように言ったり、他の家族に「○○くん、すごいよね」と話しているのを聞かせるのも効果的です。


第2回を終えて~新しい「眼鏡」との出会い

👓 今日手に入れた「新しい眼鏡」

第2回を通じて、参加者が手にするのは「行動で見る眼鏡」「ハードルを下げた眼鏡」です。

🔍 行動で見る眼鏡

  • 「だらしない」→「具体的にどんな行動?」と考える習慣
  • 「優しい」→「どんな時にどんな優しさを見せる?」と観察する力
  • 曖昧な印象ではなく、事実に基づいて子どもを理解する視点

📉 ハードルを下げた眼鏡

  • 60〜70%できていることも「素晴らしい」と認める温かさ
  • 「当たり前」を「よくやっている」に変換する優しさ
  • 完璧を求めず、今のありのままを受け入れる包容力

🌱 参加者の変化の兆し

Iさん(8歳男児の母)の感想

「『宿題をやらない』と思っていた息子ですが、『算数は自分から取り組む』『国語も声をかければ始める』『10分間は集中できる』など、実はたくさんできていることがあることに気づきました。家に帰ったら、今度は息子のできていることを具体的にほめてあげたいです」

🔮 次回(第3回)への期待

次回は「同じカテゴリーをみつける!」をテーマに、今日増やした行動項目を生活場面や性質によって分類・整理していきます。

🎯 次回予告:第3回のポイント

  • 宿題の振り返りと「子どもをほめた」体験談の共有
  • 行動をカテゴリー別に分類するワーク
  • 生活パターンや傾向の発見
  • 「強み」と「課題」のバランスを見る新しい視点

参加者へのエール

今日から、お子さんを見る「眼鏡」が変わります。同じ行動でも、これまでとは違った見え方をすることでしょう。

「行動で見る」「ハードルを下げる」…この2つのコツを使って、ぜひお子さんの新しい「いいところ」をたくさん発見してください。

そして何より、お子さんをほめることで、親である自分自身も温かい気持ちになれることを体感してください。


次回「第3回 同じカテゴリーをみつける!」でお会いしましょう 🌸

参考・引用

NPO法人アスペ・エルデの会『楽しい子育てのためのペアレント・プログラムマニュアル』、2014年

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