
第4回で「ギリギリセーフ」という革命的な視点を学び、困った行動の裏にある頑張りを発見しました。お子さんと自分自身を見る目が、きっと優しく温かくなったのではないでしょうか?
第5回では、発見したギリギリセーフをさらに深めて「きわめる」段階に入ります。「いつ・どこで・誰と」の状況分析を通じて、ギリギリセーフが起こりやすい条件を見つけ、環境を整えることで「できる」を育てる具体的な方法を学びます。
第5回で体験すること
🎯 第5回の目的
ギリギリセーフが起こる状況や条件を分析し、環境調整によって子どもの「できる」を最大限に引き出す方法を身につけます。
⏰ 第5回の流れ(約90分)
- 前回の宿題振り返り(20分)
- 状況分析の重要性(15分)
- 「いつ・どこで・誰と」分析ワーク(25分)
- 環境調整のアイデア創出(20分)
- 実践計画作成と次回への宿題(10分)
前回の宿題振り返り~ギリギリセーフ実践週間の成果
第5回では、前回の宿題「ギリギリセーフ発見ノート」と「ギリギリセーフを生かした声かけ実践」の体験談から始まります。多くの参加者が驚くべき変化を報告してくれます。
✨ ギリギリセーフ発見ノートの成果
Xさん(7歳女児の母)の発見記録
「1週間で15個のギリギリセーフを発見できました!娘の『宿題をダラダラやる』→『最終的には必ず完成させる』、『友達とよくケンカする』→『仲直りも早い』など、毎日新しい発見があって楽しかったです」
Yさん(5歳男児の母)の実践報告
「息子が癇癪を起こした時、『嫌だったこと、ちゃんと教えてくれてありがとう』と声をかけたら、泣き止むのがとても早くなりました。息子も『ママ、わかってくれた』と言ってくれて、私も嬉しかったです」
💫 ギリギリセーフ実践による親子関係の変化
保護者の変化
- イライラの軽減:問題行動を見ても冷静でいられる時間が増えた
- 声かけの変化:叱る前に認める言葉が自然に出るようになった
- 観察力の向上:子どもの良いところを見つける目が鋭くなった
子どもの変化
- 自信の向上:認められることで前向きな行動が増えた
- 甘えの表現:素直に甘えたり相談したりするようになった
- 挑戦意欲:新しいことにチャレンジする気持ちが見られる

状況分析の重要性~「いつ・どこで・誰と」の魔法
🔍 なぜ状況分析が必要なのか?
同じ子どもでも、状況によって「できる」「できない」が大きく変わります。この状況を分析することで、子どもが最も力を発揮できる環境を整えることができます。
🌟 状況分析で見えてくること
- 得意な時間帯:朝は集中できる、夕方は疲れやすいなど
- 安心できる場所:自分の部屋、リビング、学校のどこが良いか
- 相性の良い人:誰といると力を発揮しやすいか
- 効果的な働きかけ:どんな声かけや支援が有効か
📊 状況分析の3つの軸
📅 「いつ」の分析
- 時間帯:朝・昼・夕方・夜のどの時間が得意か
- 曜日:平日・週末・学校行事のある日など
- 季節・天気:体調や気分に影響する環境要因
- その他:食前・食後、遊んだ後・疲れた時など
🏠 「どこで」の分析
- 場所:家・学校・習い事の場・公園など
- 環境:静か・にぎやか・明るい・薄暗い
- 空間:広い・狭い・一人になれる・みんなと一緒
- 物の配置:整理整頓・多少散らかっている・必要な物が近くにある
👥 「誰と」の分析
- 一緒にいる人:一人・親・兄弟・友達・先生
- 関わり方:見守る・一緒にやる・声をかける・任せる
- 人数:1対1・少人数・大勢
- 雰囲気:リラックス・緊張・楽しい・真剣
この分析方法は、困った行動(例:癇癪、拒否)が起きた時にも有効です。「いつ・どこで・誰といる時に癇癪が起きやすいか」を分析することで、その行動を誘発する環境要因を避けるためのヒントも得られます。
状況分析ワーク~自分編から始めよう
👩 自分のベストコンディション発見
子どもの状況分析の前に、まず自分自身の「いつ・どこで・誰と」を分析してみます。これは、状況分析の練習にもなります。
📝 自分編状況分析の例
| 行動 | うまくいく時(いつ・どこで・誰と) | うまくいかない時 |
|---|---|---|
| 家事をする | 朝の時間帯・キッチンで・子どもが学校に行った後・音楽をかけながら | 夕方疲れた時・子どもがいる時・時間に追われている時 |
| 子どもと話す | 夜寝る前・子どもの部屋で・1対1で・ゆっくりした雰囲気で | 朝の忙しい時・リビングで・他の用事をしながら |
| リラックスする | 夜・自分の部屋で・一人で・好きな本を読みながら | 昼間・リビングで・家族がいる時・やることが残っている時 |
💡 自分編分析の気づき
Zさん(6歳男児の母)の発見
「自分の分析をしてみて、『朝の1時間が自分のゴールデンタイム』だと気づきました。この時間を大切にして、難しい家事や大事な用事はこの時間にやるようにしたら、1日がとてもスムーズになりました」

子ども編状況分析ワーク~「できる条件」を見つけよう
👶 子どもの「できる条件」発見ワーク
いよいよ子どもの状況分析です。第4回で発見したギリギリセーフを中心に、「どんな時にそのギリギリセーフが起こりやすいか」を詳しく分析していきます。
📋 子ども編状況分析の手順
- ギリギリセーフリストから1つを選ぶ(3分)
- 「うまくいく時」の条件を「いつ・どこで・誰と」で分析(15分)
- 「うまくいかない時」の条件も同様に分析(10分)
- ペアで見せ合い、新しい視点を得る(7分)
🌟 子ども編状況分析の具体例
| ギリギリセーフ | うまくいく時 | うまくいかない時 |
|---|---|---|
| 宿題を最終的にはやる | いつ:夕食後 どこで:ダイニングテーブル 誰と:お母さんが近くにいる その他:テレビを消して、明るい照明で | 学校から帰ってすぐ・自分の部屋で・一人で・テレビがついている時 |
| 友達とケンカしても仲直りする | いつ:次の日の朝 どこで:学校の教室 誰と:先生が見守ってくれている時 その他:一晩経って気持ちが落ち着いた後 | ケンカした直後・人がたくさんいる場所・感情的になっている時 |
| 片付けを声をかければする | いつ:遊び終わった直後 どこで:リビング 誰と:お母さんと一緒に その他:「一緒にやろう」の声かけで | 遊びの途中・自分の部屋で・「片付けなさい」という指示で |
🎯 状況分析から見える重要なパターン
🔍 よく見つかるパターン
- 時間的余裕:急かされない、十分な時間がある時にできる
- 安心できる環境:慣れた場所、安心できる人がいる時
- 適度なサポート:一人では難しいが、ちょっとした支援があればできる
- 動機や理由:「なぜやるのか」が分かっている時
- 体調・気分:元気な時、機嫌が良い時にはできる
環境調整のアイデア創出~「できる」を増やす工夫
🛠️ 状況分析を活かした環境調整
状況分析の結果を基に、「うまくいく条件」を意図的に作り出すアイデアを考えます。これが環境調整の核心です。
🌟 環境調整の基本原則
- できる条件を増やす:うまくいく時の条件を意識的に作る
- 困る条件を減らす:うまくいかない時の条件を避ける
- 段階的に調整:一度に全部変えず、一つずつ工夫する
- 子どもと相談:本人の気持ちや希望も聞く
- 視覚的支援の導入:スケジュール表、絵カード、タイマーなど、視覚的な手がかりで見通しを持たせる
💡 具体的な環境調整アイデア例
| 課題 | できる条件 | 環境調整のアイデア |
|---|---|---|
| 宿題が進まない | 夕食後・明るい場所・お母さんがそばにいる時 | ・夕食後のダイニングテーブルを「宿題専用時間・場所」にする ・お母さんも近くで読書や家事をする ・照明を明るくする |
| 朝の支度に時間がかかる | 前日に準備・時間に余裕がある・褒められる時 | ・前日の夜に一緒に準備する時間を作る ・普段より10分早く起こす ・できたことを具体的に褒める |
| 片付けができない | 一緒にやる・「ありがとう」と言われる・音楽がかかっている時 | ・「片付けタイム」の音楽を決める ・親も一緒に片付ける ・終わったら「ありがとう、助かった」と伝える |
🏠 家庭でできる環境調整の工夫
AAさん(11歳女児の母)の環境調整成功例
「娘の宿題問題を状況分析したら、『お風呂の後・リビングで・私が料理をしている音が聞こえる時』にスムーズに進むことがわかりました。今では、お風呂上がりにリビングのテーブルで宿題、私はキッチンで翌日の準備をする、というパターンができて、毎日ストレスなく宿題が終わります」

ギリギリセーフを「いいところ」に育てる方法
📈 ギリギリセーフの成長ステップ
環境調整によって「できる」機会が増えてくると、ギリギリセーフが「いいところ」に成長していきます。
🌱 成長の3段階
- ギリギリセーフ段階:「条件が整えばできる」
- 安定実行段階:「多くの場面でできるようになる」
- いいところ段階:「自然にできる・得意なこと」になる
✨ 成長を支える3つのポイント
1. 成功体験の積み重ね
環境調整によって「できた!」体験を増やし、子どもの自信を育てる
2. 適切なフィードバック
できた時には具体的に褒め、できなかった時も努力や過程を認める
3. 段階的な挑戦
慣れてきたら少しずつ条件を変えて、より多くの場面でできるように支援
🌟 成長事例
BBさん(5歳男児の母)の成長報告
「息子の『声をかければ片付ける』から始まって、環境を整えて成功体験を積み重ねた結果、今では『遊び終わったら自分から片付ける』ようになりました。3ヶ月かかりましたが、ギリギリセーフが本当に『いいところ』に育ちました!」

第5回の宿題~環境調整実践週間
📚 3つの宿題
宿題1:環境調整実践
- 今日考えた環境調整アイデアを1つ選んで実践する
- 1週間続けて、効果を記録する
- うまくいかない場合は、条件を微調整してみる
宿題2:状況観察日記
- 子どもの「できた瞬間」を詳しく記録
- 「いつ・どこで・誰と・どんな工夫で」できたかメモする
- パターンを見つけて、新しい環境調整のヒントを探す
💡 記録のポイント
- できた行動の詳細
- その時の状況(時間・場所・人・環境)
- 子どもの表情や反応
- 自分の気持ちの変化
宿題3:家族会議での共有
- 子どもの「できる条件」を家族で共有する
- 家族みんなで環境調整に協力する体制を作る
- 子ども自身にも「どんな時にやりやすい?」と聞いてみる
🤔 宿題でつまずきやすいポイントと対策
Q: 環境調整をしても効果が見られない時は?
A: 効果が出るまでに時間がかかることがあります。最低1週間は続けて、それでもダメなら条件を少し変えてみましょう。
Q: 子どもが環境調整を嫌がる時は?
A: 子どもと一緒に「どうしたらやりやすい?」と相談してみてください。子ども自身のアイデアを取り入れると、協力的になりやすいです。

第5回を終えて~「環境デザイナー」としての保護者
🎨 新しい役割:環境デザイナー
第5回を終えた参加者は、「環境デザイナー」という新しい視点を手に入れます。子どもを変えようとするのではなく、子どもが力を発揮できる環境を作り出す専門家になるのです。
🎯 環境デザイナーとしての視点
- 子どもの「困ったところ」は環境の問題:子どものせいではなく、環境が合っていない
- 小さな調整で大きな変化:ちょっとした工夫で劇的に改善することがある
- 個別最適化:その子に合った「オーダーメイド環境」を作る
- 成長に合わせた調整:子どもの成長と共に環境も進化させる
🌱 参加者の意識変化
CCさん(7歳男児の母)の感想
「これまで『息子が宿題をしない』と悩んでいましたが、状況分析をして環境を整えたら、息子なりに頑張れる条件があったことがわかりました。子どもを変えるのではなく、環境を変えるという発想は目からウロコでした。私は息子の『環境デザイナー』なんですね」
🔮 次回(第6回)への期待
次回はいよいよ最終回「ペアプロでみつけたことを確認する!」です。6回の学びを振り返り、ビフォーアフターの変化を実感し、今後の子育てに活かす計画を立てます。
🎯 次回予告:第6回のポイント
- 6回の学習成果の振り返りと確認
- 参加前後の変化(ビフォーアフター)を実感
- 今後も続けていきたい取り組みの計画作成
- 仲間との絆を深める最後の共有タイム
参加者へのエール
あなたは今日から、お子さんのための「環境デザイナー」です。
子どもを変えようと頑張るのではなく、子どもが輝ける環境を作り出すプロフェッショナルとして、自信を持って子育てに取り組んでください。
小さな環境調整が、お子さんの大きな可能性を引き出すきっかけになります。そして何より、環境を整えることで親子関係がもっと楽しく、もっと温かいものになるはずです。

次回「第6回 ペアプロでみつけたことを確認する!」でお会いしましょう 🌸
【参考・引用】
NPO法人アスペ・エルデの会『楽しい子育てのためのペアレント・プログラムマニュアル』、2014年
【更新履歴】
2025年10月15日:文章の構成を見直し、内容をより分かりやすく修正。

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