第3回でカテゴリー分けを体験し、生活全体の「地図」を手に入れました。お子さんと自分の得意分野・困り分野が明確に見えてきたのではないでしょうか?
第4回では、ペアレントプログラムの最も革新的な視点である「ギリギリセーフ!」を学びます。これは、困った行動の裏に隠れている「実は頑張っているところ」「本当はできているところ」を発見する、まさに目からウロコの考え方です。
第4回で体験すること
🎯 第4回の目的
困った行動を「頑張り」の視点で見直し、子どもと自分の新しい良いところを発見します。「問題行動」が「成長への努力」に見える体験をします。
⏰ 第4回の流れ(約90分)
- 前回の宿題振り返り(20分)
- 「ギリギリセーフ」とは?(20分)
- 自分の「ギリギリセーフ」発見ワーク(20分)
- 子どもの「ギリギリセーフ」発見ワーク(20分)
- ペアでの共有と次回への宿題(10分)
前回の宿題振り返り~カテゴリー別観察の成果
第4回は、前回の宿題「カテゴリー別観察とほめる実践」の振り返りから始まります。参加者からは驚きの発見がたくさん報告されることが多いです。
✨ 参加者の観察成果
Pさん(6歳男児の母)の発見
「『気持ちの調節』カテゴリーを意識して観察していたら、息子が『怒っても5分以内には落ち着く』『泣いても最後は必ず理由を話そうとする』ことに気づきました。癇癪ばかりに注目していて、こんな頑張りを見落としていたんですね」
Qさん(8歳女児の母)の発見
「『学習』カテゴリーで娘をほめるのは難しいと思っていましたが、『宿題を始めるまでに時間がかかるけど、声をかければ必ずやる』『難しい問題でも諦めずに10分は考える』など、実はたくさん頑張っていることがありました」
🔍 カテゴリー別観察で見えてきたこと
新しい発見のパターン
- 時間軸での発見:「最終的にはできている」「時間をかければできる」
- 条件付きでの発見:「声をかければできる」「一人なら集中できる」
- 部分的な発見:「完璧ではないけれど、ここまではできている」
- 頻度の発見:「毎回ではないけれど、半分以上はできている」

「ギリギリセーフ」とは?~革命的な視点転換
🌟 「ギリギリセーフ」の定義
「ギリギリセーフ」とは、一見「困った行動」に見えることの中にある「実は頑張っているところ」「本当はできているところ」を見つける、ペアレントプログラム独自の視点です。
💡 「ギリギリセーフ」の例
- 「宿題をやりたがらない」 → 「声をかければ最終的にはやる」
- 「友達とケンカする」 → 「自分の気持ちを相手に伝えようとしている」
- 「片付けができない」 → 「使ったものは覚えている」
- 「癇癪を起こす」 → 「嫌なことを嫌と表現できている」
🎯 なぜ「ギリギリセーフ」が重要なのか?
子どもにとっての効果
- 自己肯定感の向上:「できない」ではなく「頑張っている」と認識
- 成長意欲の向上:否定されずに励まされることで前向きに
- 安心感の獲得:ありのままの自分を受け入れてもらえる
保護者にとっての効果
- イライラの軽減:「問題」ではなく「成長過程」として捉える
- 新しい関わり方:叱るより支える関わりが増える
- 希望の発見:「この子はダメ」から「この子は頑張っている」へ

自分の「ギリギリセーフ」発見ワーク
👩 まずは自分から始める理由
子どものギリギリセーフを見つける前に、まず自分のギリギリセーフを発見します。これは、この視点に慣れるためと、自分にも優しくなるためです。
📋 自分のギリギリセーフ発見の手順
- 現状把握表の「困ったところ」を見直す(5分)
- 一つずつ「実は…」「でも…」という視点で見直す(10分)
- ペアで相談しながらギリギリセーフを見つける(5分)
✨ 自分のギリギリセーフ発見例
困ったところ | ギリギリセーフ! |
---|---|
つい子どもに怒鳴ってしまう | 「子どものことを心配しているから怒る」 「後で必ず反省している」 |
家事が思うように進まない | 「子どもを最優先にしている」 「完璧でなくても毎日続けている」 |
夜更かしが続いてしまう | 「一人の時間を大切にしている」 「翌日も朝はちゃんと起きている」 |
人に相談するのが苦手 | 「家族のプライバシーを守っている」 「自分で解決しようと努力している」 |
💡 自分のギリギリセーフ発見の体験談
Rさん(5歳男児の母)の体験
「『時間管理が下手』だと自分を責めていましたが、『子どもが甘えてきた時は必ず手を止めて相手をする』『急いでいても子どもの安全は確認する』など、実は大切なことを優先していたんですね。自分にも少し優しくなれました」

子どもの「ギリギリセーフ」発見ワーク
👶 子どものギリギリセーフ発見のコツ
子どものギリギリセーフを見つけるには、「なぜその行動をするのか?」を子どもの立場になって考えることが重要です。
🔍 ギリギリセーフ発見の3つの視点
- 発達的視点:その子の年齢・発達段階では頑張っている
- 機能的視点:その行動にはその子なりの理由・目的がある
- 個性的視点:その子らしさ・その子の特性として理解する
🌟 年齢別・場面別ギリギリセーフ例
困った行動 | ギリギリセーフ! |
---|---|
宿題をなかなか始めない | 「声をかければ最終的にはやる」 「やり始めると集中して取り組む」 「宿題があることは覚えている」 |
友達とすぐケンカになる | 「自分の気持ちを伝えようとしている」 「友達と関わろうとしている」 「ケンカしても翌日には遊んでいる」 |
癇癪を起こしやすい | 「嫌なことを嫌と表現している」 「感情が豊かである証拠」 「時間が経てば落ち着く」 |
偏食が多い | 「嫌いでも食卓には座る」 「好きなものはしっかり食べる」 「新しい食べ物にも挑戦しようとする」 |
片付けができない | 「使いたいものはどこにあるか覚えている」 「大事なものは大切に扱う」 「声をかければ一緒に片付ける」 |
朝起きるのが苦手 | 「起きた後は機嫌が良い」 「夜はしっかり眠っている」 「最終的には自分で起きようとする」 |

💫 子どものギリギリセーフ発見の実例
Sさん(7歳男児の母)の大発見
「息子の『集中力がない』ことに悩んでいましたが、よく観察すると『好きなことには1時間でも集中できる』『疲れている時は自分から休憩を取る』『集中が切れても怒らずに別のことを始める』など、実は自分なりに集中をコントロールしていることがわかりました」
Tさん(4歳女児の母)の気づき
「娘の『わがまま』だと思っていた行動が、『自分の意見をしっかり持っている』『嫌なことは嫌とはっきり言える』『納得すれば協力的』など、実は自立心や自己主張の現れだったんですね。見方が180度変わりました」
ペアでの「ギリギリセーフ」発見タイム
👥 仲間と一緒に見つける効果
自分一人では気づけないギリギリセーフも、ペアの相手から客観的な視点をもらうことで発見できます。
ペアワークの進め方
- お互いの「困った行動」を一つずつ紹介(5分)
- 相手の立場で「ギリギリセーフ」を提案し合う(10分)
- 「なるほど!」という発見を共有(5分)
💬 ペアワークでよく出る「なるほど!」
- 「そんな見方があったんですね!」
- 「確かに、それも一つの頑張りですね」
- 「その視点は全然考えたことがありませんでした」
- 「うちの子も同じ!でもそう考えると可愛く見えます」
🤝 ペアワークの具体例
UさんとVさんのペアワーク例
Uさんの悩み:「息子が『忘れ物が多い』んです」
Vさんからの提案:「でも学校には毎日行っているし、忘れ物があっても先生や友達に借りるなど、自分なりに解決策を見つけているのではないですか?」
Uさんの気づき:「確かに!息子なりに困ったときの対処法を身につけているんですね。それもギリギリセーフですね」

「ギリギリセーフ」を日常で活かす方法
🏠 家庭での活用のポイント
発見した「ギリギリセーフ」を、実際の子育てにどう活かすかが重要です。
💡 活用の3ステップ
- 認める:「○○頑張ってるね」と子どもの努力を認める
- 支える:どうすればもっとできるか一緒に考える
- 待つ:完璧を求めず、子どものペースを大切にする
📝 ギリギリセーフを活かした声かけ例
場面 | 従来の声かけ | ギリギリセーフを生かした声かけ |
---|---|---|
宿題をなかなか始めない | 「早く宿題しなさい!」 | 「宿題のこと覚えていてえらいね。一緒に始めようか」 |
友達とケンカした | 「なんでケンカするの!」 | 「自分の気持ちを伝えられたね。今度はどんな風に言えるかな?」 |
癇癪を起こした | 「泣いてばかりいないで!」 | 「嫌だったこと、しっかり教えてくれてありがとう」 |

第4回の宿題~「ギリギリセーフ」実践週間
📚 3つの宿題
宿題1:ギリギリセーフ発見ノート作成
- 毎日1つずつ新しいギリギリセーフを見つける
- 子どもだけでなく、自分や家族のギリギリセーフも記録
- 発見したギリギリセーフをノートに書き留める
宿題2:ギリギリセーフを活かした声かけ実践
- 困った行動があった時は「ギリギリセーフはないか?」と考えてから声かけ
- 叱る前に「頑張り」を認める言葉をかける
- 子どもの反応と自分の気持ちの変化を記録
💡 ギリギリセーフ声かけのコツ
- 「○○しようと頑張ったんだね」
- 「○○はちゃんとできているね」
- 「○○のところは成長したね」
宿題3:家族でギリギリセーフ共有
- 家族みんなでお互いのギリギリセーフを見つけ合う
- 夫婦でお互いの子育てのギリギリセーフを認め合う
- 子どもにも「お父さん・お母さんのいいところ」を聞いてみる
🤔 宿題でつまずきやすいポイントと対策
Q: ギリギリセーフが見つからない時は?
A: 「完全にダメ」な行動はほとんどありません。「時々はできる」「部分的にはできる」「最終的にはできる」という視点で探してみてください。
Q: ギリギリセーフを認めると甘やかしになりませんか?
A: ギリギリセーフは「甘やかし」ではなく「現実的な評価」です。子どもの努力を認めることで、さらなる成長への意欲が生まれます。

第4回を終えて~新しい「愛情の眼鏡」
💓 「愛情の眼鏡」をかけた子育て
第4回を終えた参加者が手に入れるのは、「愛情の眼鏡」です。これまでの「問題発見の眼鏡」から、「頑張り発見の眼鏡」への大きな転換です。
💗 愛情の眼鏡で見えるもの
- 困った行動 → その子なりの頑張り・工夫・成長
- できない → できる部分・できる条件・できる可能性
- 問題児 → 個性的で魅力的な子
- ダメな親 → 一生懸命な親・愛情深い親
🌱 参加者の心境の変化
Wさん(6歳男児の母)の感想
「息子を『困った子』だと思っていましたが、ギリギリセーフの視点で見ると『一生懸命な子』『頑張り屋さんの子』に見えてきました。同じ行動なのに、こんなに印象が変わるなんて驚きです。息子がとても愛おしく感じられます」
🔮 次回(第5回)への期待
次回は「ギリギリセーフ!をきわめる!」をテーマに、発見したギリギリセーフをさらに深め、状況や環境を考慮した分析を学びます。
🎯 次回予告:第5回のポイント
- ギリギリセーフが起こりやすい条件・環境の分析
- 「いつ・どこで・誰と」の状況分析ワーク
- 環境調整によるさらなる成長支援
- ギリギリセーフを「いいところ」に育てる方法
参加者へのエール
今日から、お子さんを見る目が愛情に満ちたものになります。
「ギリギリセーフ」という新しい眼鏡をかけて、お子さんの頑張りをたくさん見つけてください。そして何より、頑張っているお子さんを育てている自分自身も、たくさん褒めてあげてください。
完璧な子どもはいません。でも、一生懸命な子どもはたくさんいます。あなたのお子さんも、その一人です。

次回「第5回 ギリギリセーフ!をきわめる!」でお会いしましょう 🌸
参考・引用
NPO法人アスペ・エルデの会『楽しい子育てのためのペアレント・プログラムマニュアル』、2014年
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